わが心あやまちなく 081
解読編
帚木 原文 現代語訳 第5章20
わが心あやまちなくて見過ぐさば さし直してもなどか見ざらむとおぼえたれど それさしもあらじ
難易度☆☆☆
難易度☆☆☆
(頭中将)こちらに非がなくて事荒立てないのであれば、無理に性根を叩き直してでも一生添い遂げたいと思うものだが、それはできない相談だ。
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ここがPoint
頭中将が諦観に至る曲折
・同じくはわが力入りをし直しひきつくろふべき所なく 心にかなふやうにもや/02-052
・ただひたふるに子めきて柔らかならむ人を とかくひきつくろひてはなどか見ざらむ 心もとなくとも直し所ある心地すべし/02-059
・すこし後れたる方あらむをもあながちに求め加へじ/02-064
左馬頭にことごとく論破された結果、当初から百八十度違う女性観になっている点に注意したい。
解析編
語りの対象・構造型・経路図
対象:男(光源氏)/女(葵の上)
- 《わが心あやまちなくて見過ぐさば・さし直してもなどか見ざらむ》A・B
こちらに非がなくて事荒立てないのであれば、無理に性根を叩き直してでも一生添い遂げたい
- 《とおぼえたれど・それさしもあらじ》C・D
と思うものだが、それはできない相談だ。
直列型:A<B<C<D
- A<B<C<D:A<B<C<D
- A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉 ※係り受けは主述関係を含む
- 〈直列型〉<:直進 #:倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列 〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 |:中止法
- 〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用
述語句・情報の階層・係り受け
構文:ど…さしもあらじ/四次
〈[男]〉わが心あやまちなくて見過ぐさば さし直してもなどか見ざらむとおぼえたれど 〈それ〉さしもあらじ
- 〈主〉述:一朱・二緑・三青・四橙・五紫・六水 [ ]:補 /:挿入 @・@・@・@:分岐
- 113「それ」:指示語(「さ」と同じく「さし直す」を受ける)と考えても発語の辞と考えても意味的にはかわらない。
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語彙編
見過ぐす
当座は大目に見る。「頼もしげなき疑ひ」をもってすぐに離縁することにしない。
さし直す
無理に矯正する。
などか見ざらむ
反語で、添い遂げるの意味。
それさしもあらじ
人の心を強制して直すことはできない。
おさらい
わが心あやまちなくて見過ぐさば さし直してもなどか見ざらむとおぼえたれど それさしもあらじ
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