とあればかかりあふ 052 ★★☆

2019-10-07★★☆:文の構造を捉え直す02 帚木

解読編

帚木 原文 現代語訳 第4章06

とあればかか あふさきるさに  なのめにさてもありぬべきひとすくなきを きしきこころのすさびにて ひとのありさまをあまたはせむのこのみならねど ひとへにおもさだむべきよるべとすばかりに おなじくはわがちからりをしなほしひきつくろふべきところなく こころにかなふやうにもやと りそめつるひとさだまりがたきなるべ 
難易度難易度★★☆
(頭中将)こちらがよくても向こうがだめという具合に思いにまかせぬもので、不充分ながらそのままでこと足りる人が少ないのが原因であって、浮ついた気持ちで面白半分に、女の生態を数多く見比げようとの趣味からではないのだけれど、ひたすら生涯の伴侶を決定せねばと思いつめるばかりに、どうせならわざわざこちらが骨折りして直し改めねばならないところなどなく、意にかなう風であればと、選んでかかる人は決まりにくくなってしまうものなのです。

ここがPoint

頭中将の女性観の揺れ

欠点ある場合には強制してでも直すといったが欠点はできればない方がいいという発言には、頭中将の女性観が如実に表れている。この後見るように、この女性観は左馬頭によって否定される。

解析編

語りの対象・構造型・経路図

対象:妻候補世の男性(発言者)

  • とあればかかりあふさきるさにて・なのめにさてもありぬべき人の少なきを》A・B
    こちらがよくても向こうがだめという具合に思いにまかせぬもので、不充分ながらそのままでこと足りる人が少ないのが原因であって、
  • 好き好きしき心のすさびにて・人のありさまをあまた見合はせむの好みならねど》C・D
    浮ついた気持ちで面白半分に、女の生態を数多く見比げようとの趣味からではないのだけれど、
  • ひとへに思ひ定むべきよるべとすばかりに》E
    ひたすら生涯の伴侶を決定せねばと思いつめるばかりに、
  • 同じくはわが力入りをし・直しひきつくろふべき所なく・心にかなふやうにもやと》F・G・H
    どうせならわざわざこちらが骨折りして直し改めねばならないところなどなく、意にかなう風であればと、
  • 選りそめつる人の・定まりがたきなるべし》I・J
    選んでかかる人は決まりにくくなってしまうものなのです。

分岐型:A<B<(C<D<(E<(F+G<H<)))I<J

  • A<B<(C<D<(E<(F+G<H<)))I<J:A<B<I<J、C<D<I、E<I、F+G<H<I
  • A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉 ※係り受けは主述関係を含む
  • 〈直列型〉<:直進 :倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列 〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 :中止法
  • 〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用

述語句・情報の階層・係り受け

構文:の定まりがたきなるべし/四次

とあればかかり あふさきるさにて なのめに072てもありぬべき〈人〉の少なき 好き好きしき心のすさびにて 人のありさま073また見合はせむの好みならね 074とへに思ひ定むべきよるべとすばかり 075じくはわが力入りをし直しひきつくろふべき〈所〉なく 心にかなふやうにもや 選りそめつる〈人〉の定まりがたきなるべし
  • 〈主〉述:一朱二緑三青四橙五紫六水 [ ]:補 /:挿入 :分岐
  • 072「さてもありぬべき人の少なきを」→「定まりがたきなるべし」
  • 073「あまた見合はせむの好みならねど」→「定まりがたきなるべし」
  • 074「ひとへに思ひ定むべきよるべとすばかりに」→「定まりがたきなるべし」
  • 075「同じくはわが力入りをし」「直しひきつくろふべき」(並列)→「所なく」

★ ★

語彙編

とあればかかり

一方がこうなれば、他方もこうなる。

あふさきるさにて

あちらがよけらば、こちらが悪く

なのめに

不充分ながらも。

さてもありぬべき

そのままでかまわない。

すさび

もてあそび。

よるべ

頼みとする相手、夫、妻。

わが力入りをし直しひきつくろふ

無理に矯正する。

おさらい

とあればかかりあふさきるさにて なのめにさてもありぬべき人の少なきを 好き好きしき心のすさびにて 人のありさまをあまた見合はせむの好みならねど ひとへに思ひ定むべきよるべとすばかりに 同じくはわが力入りをし直しひきつくろふべき所なく 心にかなふやうにもやと 選りそめつる人の定まりがたきなるべし

★ ★ ★