事が中に なのめな 057 ★★★

2019-11-06★★★:源氏千年の謎に挑む02 帚木

解読編

帚木 原文 現代語訳 第4章11

ことなかに なのめなるまじきひとうしろかたは もののあはれぐし はかなきついでのなさけあり をかしきにすすめるかた なくてもよかるべしとえたる 
難易度難易度★★★
(左馬頭)様々な事例の中でも特に、いい加減ではすまない高貴な方の世話をする場合には、何かと深く感じ入り過ぎたり、実のないうわべの思いやりをみせたり、風流趣味に偏したりする方面は、なくてもよさそうに思われるものの、

解釈の決め手

事が中に:どこに掛けて読むか

「中でも特に」と一般に読まれている。「妻が心得る事柄の中でも特に」という意味で一見それは正しく思えるが、やはりここもどこにかかるかが問題である。「事が中に」をその意味では「なくてもよかるべし」にかけることになる。高貴な方の世話する場合には、特にこれこれは必要ないという意味だが、この後「また」から始まる文で、「情け不要論」を逆転させるためのここは譲歩文で、「必要がない」を強調する場所ではない(「中でも特に…と見える」も同じである)。「特に高貴な方を世話する場合には」の方が、変なところに力点がおかれず、自然である。様々なケースの中でも、「高貴な方のお世話の場合は…は不要に見えるが、かと言って」という論理展開である。

もののあはれ知り過ぐし:無常観

世の無常を感じすぎること。「あはれ進みぬればやがて尼にもなりぬかし/02-068」のエピソードを念頭にした表現。

はかなきついでの情けあり:あとづけのやさしさ

真心からでなくその折々の感情。「まして人の心の時にあたりて気色ばめらむ見る目の情けをばえ頼むまじく思うたまへ得てはべる/02-090」を話の枕として始まる指食いの女を念頭にした表現。

をかしきにすすめる方:芸術好き

風流気取り。「あくまでさればみ好きたるはさても見る限りはをかしくもありぬべし時々にてもさる所にて忘れぬよすがと思ひたまへむには頼もしげなく/02-128」思って通うのをやめてしまった木枯の女を念頭にした表現。

ここがPoint

左馬頭の論法

前文で「あまりの情け(過度の情)」を難点としたのに対して、風流心なども妻選びの本質ではないと頭中将の意見に賛同するようで、逆に家庭的すぎるのも大事を話し合える間柄でないと、左馬頭はしりぞける。頭中将の女性論が単調で結論を導きやすいのに対して、左馬頭は、いったん目上である頭中将の意見を受け入れた上で反論することが多く、こうでもないという主張に終、結論を出しにくいところがある。

解析編

語りの対象・構造型・経路図

対象:諸事例高貴な男世話する女発言者(左馬頭)

  • 事が中に・なのめなるまじき人の後見の方は》A・B
    様々な事例の中でも特に、いい加減ではすまない高貴な方の世話をする場合には、
  • もののあはれ知り過ぐし・はかなきついでの情けあり・をかしきに進める》C・D・E
    何かと深く感じ入り過ぎたり、実のないうわべの思いやりをみせたり、風流趣味に偏したりする
  • 方なくてもよかるべし・と見えたるに》F・G
    方面は、なくてもよさそうに思われるものの、

分岐型:A<B<C+D+E<F<G

  • A<B<C+D+E<F<G:A<B<C+D+E<F<G
  • A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉 ※係り受けは主述関係を含む
  • 〈直列型〉<:直進 :倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列 〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 :中止法
  • 〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用

述語句・情報の階層・係り受け

構文:と見えたるに/三次

事が中に なのめなるまじき人の後見の〈方〉は 082ののあはれ知り過ぐし はかなきついでの情けあり をかしきに進める〈方〉なくてもよかるべし083えたるに
  • 〈主〉述:一朱二緑三青四橙五紫六水 [ ]:補 /:挿入 :分岐
  • 「あり」は連用形。下欄〈用言並列の規則〉を参照。
  • 082「もののあはれ知り過ぐし」「はかなきついでの情けあり」「をかしきに進める」(並列)→「方」→「なくてもよかるべし」
  • 083「見えたるに」→「また/02-058」

用言並列の規則

並列する最後以外の用言は連用形。従って「知り過ぐし」「あり」は連用形。最後の並列は次に続く形であり、「方」という体言に続くので「進める」は連体形となる。

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語彙編

なのめなるまじき

並のものであってはいけない、格別であるべき。

おさらい

事が中に なのめなるまじき人の後見の方は もののあはれ知り過ぐし はかなきついでの情けあり をかしきに進める方なくてもよかるべしと見えたるに

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