女のこれはしもと難 017

2019-11-06☆☆☆:特別な問題点はない02 帚木

解読編

帚木 原文 現代語訳 第2章09

をんなのこれはしもとなんつくまじきは かたくもあるかな  やうやうなむたまへ
難易度☆☆☆
(頭中将)世の女性でこれこそはと難点をみつけられないのは、めったにないものだなと、近頃ようやく分かってまいりましたよ。

ここがPoint

「言-事」構造

「女のこれはしもと難つくまじきは」から始まるのが高名な「雨夜の品定め」。これより前が導入であり、「忍ぶの乱れや/02-004」は藤壺との関係を匂わす働きをしている。以後、光は品定めの聞き役を引き受けるが、通例説かれているように光はそれらの議論に関心を示しているとは読めない。光の頭にあるのは藤壺のことである。ただし、光が品定めの議論に関心を持っていないことと、品定めの議論以後、そこで行われたやりとり通りに中流の女性と出会ってゆくこととは別である。その議論に興味を覚えて中流女性を恋するのではなく、中流女性と出会う運命にあり、議論は登場人物の予期しないながら、運命の先取りをしたと考える方がよい。これは高麗人の予言と同じ構造である。なすなち、「深い意味があるとの意識なく言葉が先ず発せられ、それを追いかけるように重大事件が発生する」というパターンが頻出する。これを「言―事」構造と呼ぶことにしよう。言葉にはまだ魔力があり、それが語られることで、実際に起こってしまうのである。
この変種が「事―言」構造で、事件を知らない第三者が、そのことを言い当ててしまうというパターン。「女のこれはしもと難つくまじきは難くもあるかな」がそれで、光源氏と藤壺の関係を知る聞き手には、この発言が頭中将の本来の意図から逸れた意味を光源氏に突きつけるように響く。聴く者の立ち場によって、言葉の重みや意味が異なってくるのだ。源氏物語は事柄と言葉が濃密に関わりあった空間を形成しており、言葉が発せられることで、水面に石が投じられたごとく、事柄が立ち上がってくるのである。言葉と事柄の連鎖こそ、物語の本来的あり方であろう。
なおまた、言葉には発する人物があり、発言内容のみならず、発話者のキャラクターも物語に意味を与える重要な要素である。雨夜の品定めの導入部で、光源氏は「好き好きしさは好ましからぬ御本性/心尽くし」というアンビバレントな性格が説かれている。一方で頭中将は、「好きがましきあだ人」「なれなれし」など、性格作りが単純である。

解析編

語りの対象・構造型・経路図

対象:欠点のない女頭中将

  • 女のこれはしもと難つくまじきは 難くもあるかな》A
    世の女性でこれこそはと難点をみつけられないのは、めったにないものだなと、
  • やうやうなむ見たまへ知る》B
    近頃ようやく分かってまいりましたよ。

直列型:(A<)B

  • (A<)B:A<B
  • A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉 ※係り受けは主述関係を含む
  • 〈直列型〉<:直進 :倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列 〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 :中止法
  • 〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用

述語句・情報の階層・係り受け

構文:と…なむ見たまへ知る/三次

〈女〉のこれはしもと難つくまじき〉は 難くもあるかな 〈[頭中将]〉やうやうなむ見たまへ知る
  • 〈主〉述:一朱二緑三青四橙五紫六水 [ ]:補 /:挿入 :分岐
  • ここより有名な「雨夜の品定め」となる。それまではシチュエーション作り。

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語彙編

難つく

非難する

見たまへ知る

「見知る」に謙譲語の「たまへ」(下二段活用)がついた語。自分の動作に用いる。

おさらい

女のこれはしもと難つくまじきは 難くもあるかなと やうやうなむ見たまへ知る

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