そのうちとけてかた 012
解読編
目次
帚木 原文 現代語訳 第2章04
そのうちとけてかたはらいたしと思されむこそゆかしけれ おしなべたるおほかたのは 数ならねど程々につけて書き交はしつつも見はべりなむ おのがじし恨めしき折々 待ち顔ならむ夕暮れなどのこそ見所はあらめと怨ずれば
難易度☆☆☆
難易度☆☆☆
(頭中将)その心を許した読まれては恥ずかしいとお思いなのが見たいんですよ。変わりばえしないありふれたのなら、人数にも入らぬわたくしでも分相応な相手とやりとりしながら読みますとも。お互い不実をかこつ折りだとか、人待ち顔でいよう夕暮れなんかの手紙だとか読みごたえはありましょうと恨めしがったところ、
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解析編
語りの対象・構造型・経路図
対象:光源氏/頭中将/普通の手紙/プライベートな秘密の手紙
- 《そのうちとけてかたはらいたしと思されむこそゆかしけれ》A
その心を許した読まれては恥ずかしいとお思いなのが見たいんですよ。 - 《おしなべたるおほかたのは 数ならねど程々につけて書き交はしつつも見はべりなむ》B
変わりばえしないありふれたのなら、人数にも入らぬわたくしでも分相応な相手とやりとりしながら読みますとも。 - 《おのがじし恨めしき折々 待ち顔ならむ夕暮れなどのこそ見所はあらめと・怨ずれば》C・D
お互い不実をかこつ折りだとか、人待ち顔でいよう夕暮れなんかの手紙だとか読みごたえはありましょうと恨めしがるので、
分岐型・中断型・分配型:AφBφ*A+*B+C<D
- AφBφ*A+*B+C<D:A,B、*A+*B+C<D
- A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉 ※係り受けは主述関係を含む
- 〈直列型〉<:直進 #:倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列 〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 |:中止法
- 〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用
述語句・情報の階層・係り受け
構文:と怨ずれば/三次
@そのうちとけてかたはらいたしと〈[光源氏]〉思されむこそゆかしけれ おしなべたるおほかた〈の〉は 数ならねど程々につけて書き交はしつつも見はべりなむ おのがじし恨めしき折々 待ち顔ならむ夕暮れなどのこそ見所はあらめ 〈[頭中将]〉と@怨ずれば
- 〈主〉述:一朱・二緑・三青・四橙・五紫・六水 [ ]:補 /:挿入 @・@・@・@:分岐
- 021「おしなべたるおほかたのは」→「(書き交はしつつも)見はべりなむ」
- 019「ゆかしがれば/02-010」→020「許したまはね(ば)/02-011」→022「(見所はあらめと)怨ずれ(ば)」→「とり隠したまひつ/02-014」
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語彙編
うちとけて
安心しきって、何でも書いてある手紙。
かたはらいたし
そばで読まれて恥ずかしくなるような内容。
ゆかしけれ
読みたい。
おしなべたる
内容が平凡なこと。
おほかたの
相手ややりとりの状況が平凡なこと。
数ならねど
貴人ではないという謙譲語。人数に入らない。
程々につけて
自分の身分と相手の身分に応じて。
見はべりなむ
見られましょう。未来にきっとそうなるという確信、すでに見ているという経験を語る解説があるが間違いである。
おのがじし
男の方も女の方もそれぞれに。
恨めしき折々
相手の不実を恨む手紙。左馬頭の語る指を喰う女の先触れになっている。「(言=事)構造」。
待ち顔ならむ夕暮れ
夕暮れに待ち焦がれた女が男に出す誘いの手紙。左馬頭の語る木枯しの女の先触れになっている。「(言=事)構造」。
怨ずれ
そういうものが見たいのだと、うらみごとを言う。
おさらい
そのうちとけてかたはらいたしと思されむこそゆかしけれ おしなべたるおほかたのは 数ならねど程々につけて書き交はしつつも見はべりなむ おのがじし恨めしき折々 待ち顔ならむ夕暮れなどのこそ見所はあらめと怨ずれば
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