世の好き者にて物よ 030 ★☆☆
解読編
目次
帚木 原文 現代語訳 第2章22
世の好き者にて物よく言ひとほれるを 中将待ちとりてこの品々をわきまへ定め争ふ
難易度★☆☆
難易度★☆☆
世に名高い遊び人で目から鼻に抜ける論客なので、頭中将は待ってましたと座に取りこみこの品定めを決着させようと議論をたたかわせる。
解釈の決め手
中将待ちとりてこの品々をわきまへ定め争ふ:現行の解釈は「争ふ」になっていない
ここは以後の発言の話者を決定するうえで、極めて重要な文言である。この箇所からすると、二人を待ち受けた頭中将は左馬頭と討議していることになっている。これまでの注釈では、頭中将はほとんどしゃべることなく、ただ左馬頭の意見を唯々諾々と受け入れているに過ぎない。左馬頭と頭中将の発言は量的にも拮抗するのでなければ「争ふ」とは形容しえない。
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解析編
語りの対象・構造型・経路図
対象:左馬頭/頭中将
- 《世の好き者にて物よく言ひとほれるを》A
世に名高い遊び人であり、また目から鼻に抜ける論客なので、 - 《中将待ちとりて・この品々をわきまへ定め争ふ》B・C
頭中将は待ってましたと座に取りこみ、この品定めを決着させようと論を戦わせる。
直列型:A<B<C
- A<B<C:A<B<C
- A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉 ※係り受けは主述関係を含む
- 〈直列型〉<:直進 #:倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列 〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 |:中止法
- 〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用
述語句・情報の階層・係り受け
構文:をわきまへ定め争ふ/三次
〈[左馬頭]〉世の好き者にて物よく言ひとほれるを 〈中将〉待ちとりて この品々をわきまへ定め争ふ
- 〈主〉述:一朱・二緑・三青・四橙・五紫・六水 [ ]:補 /:挿入 @・@・@・@:分岐
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語彙編
世のすき者
世に知られた風流人。
物よく言ひとほれる
筋道を立てて話のできる論客。これは特に左馬頭を言う。藤式部丞は身分が低いゆえか、議論には参加しない。
おさらい
世の好き者にて物よく言ひとほれるを 中将待ちとりて この品々をわきまへ定め争ふ
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