人の品高く生まれぬ 026
解読編
目次
帚木 原文 現代語訳 第2章18
人の品高く生まれぬれば 人にもてかしづかれて 隠るること多く 自然にそのけはひこよなかるべし
難易度☆☆☆
難易度☆☆☆
(頭中将)家柄が高く生まれついたならば、まわりから大切に扱われて人目に立たぬことが多く、自然と周りに与える印象はこの上なくなるでしょう。
解釈の決め手
隠るること多く:隠れるのは欠点?
欠点の隠れることが多くと通例解釈される。頭中将の前の発言から考えれば、欠点が隠れるとの解釈は的は外れていない。しかし、欠点が見えないこと(非消極的評価)は、後につづく「自然にそのけはひこよなかるべし/積極的評価)とは結びつきが悪い。ここは単に深窓の令嬢ということ、幾重にも防御がなされていて、人づてにしか情報が外に出てこない。だから先の推論通り、自然に「こよなく」なるのである。
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解析編
語りの対象・構造型・経路図
対象:上の品の女
- 《人の品高く生まれぬれば》A
家柄が高く生まれついたならば、 - 《人にもてかしづかれて隠るること多く・自然にそのけはひこよなかるべし》B・C
まわりから大切に扱われて人目に立たぬことが多く、自然と周りに与える印象はこの上なくなるでしょう。
直列型:A<B<C
- A<B<C:A<B<C
- A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉 ※係り受けは主述関係を含む
- 〈直列型〉<:直進 #:倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列 〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 |:中止法
- 〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用
述語句・情報の階層・係り受け
構文:に…の…こよなかるべし/三次
〈人〉の〈品〉高く生まれぬれば 人にもてかしづかれて隠るること多く 自然にその〈けはひ〉こよなかるべし
- 〈主〉述:一朱・二緑・三青・四橙・五紫・六水 [ ]:補 /:挿入 @・@・@・@:分岐
- 「高く」の主語は「人の品」、「人にもてかしづかれて隠るること多く」の主語は「人」であり、主語が分離状態になっている。これを懸垂構文と呼ぶ。懸垂構文は日本語では横行するが、欧文では非文法とされる。
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読解の要点
・「懸垂構文」:「AのB」+述語M+述語N
述語Mの主語は「(Aの)B」、述語Nの主語は「A」。このように主語の分離した構文。
述語Mの主語は「(Aの)B」、述語Nの主語は「A」。このように主語の分離した構文。
おさらい
人の品高く生まれぬれば 人にもてかしづかれて隠るること多く 自然にそのけはひこよなかるべし
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