いとさばかりならむ 024
解読編
目次
帚木 原文 現代語訳 第2章16
いとさばかりならむあたりには 誰れかはすかされ寄りはべらむ
難易度☆☆☆
難易度☆☆☆
(頭中将)まったくそんなつまらないところへは、誰がだまされて言い寄りましょう。
解釈の決め手
いとさばかりならむあたりには誰れかすかされ寄りはべらむ:頭中将の生真面目さ
先の頭中将の論は、仲人に言いくるめられるので、実際に女と接しないと欠点は見えてこないというものであった。この論からすれば、取り柄がない女に誰も言い寄らないというのはおかしい。取り柄がなくても仲人に騙されるのだから。ただ、頭中将の頭の中では、全く取り柄のない女など下賎な身以外に考えられず、下賎な女には、仲人がどうごまかそうが、はなから相手にしないとの結論があり、この発言になったのだろう。頭中将は恋の道では先輩風を吹かせたいがために、光源氏の前では恰好をつけていたい。しかし、光源氏の質問は議論の出発点を混ぜ返すものであり、これにまじめに答えようとして、あたふたしている姿が浮かぶ。
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解析編
語りの対象・構造型・経路図
対象:見所のない女/世の男
- 《いとさばかりならむあたりには・誰れかはすかされ寄りはべらむ》A・B
まったくそんなつまらないところへは、誰がだまされて言い寄りましょう。
直列型:A<B
- A<B:A<B
- A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉 ※係り受けは主述関係を含む
- 〈直列型〉<:直進 #:倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列 〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 |:中止法
- 〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用
述語句・情報の階層・係り受け
構文:には…かはすかされ寄りはべらむ/二次
いと〈さ=片かどもなき〉ばかりならむあたりには 〈誰れ〉かはすかされ寄りはべらむ
- 〈主〉述:一朱・二緑・三青・四橙・五紫・六水 [ ]:補 /:挿入 @・@・@・@:分岐
- 035「さばかりならむあたり」:「片かどもなき人/02-023」
- 036「誰れかは」:反語
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おさらい
いとさばかりならむあたりには 誰れかはすかされ寄りはべらむ
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