母后 あな恐ろしや 129 ★☆☆

2019-10-11★☆☆:語義の洗い直しから01 桐壺

解読編

桐壺 原文 現代語訳 第9章03

ははきさき あなおそろしや とうぐうにようのいとさがなくて きりつぼかうのあらはにはかなく てなされにしためしもゆゆしうとおぼしつつみ  すがすがしうもおぼたざりけるほどに きさきせたまひ  難易度★☆☆
母后は、まあ恐ろしい、東宮の母はとても性悪で桐壺の更衣があんなにはっきりとあっけない最期を迎えるはめになった例も忌まわしいのにと、口をつぐみ前向きに事をお進めにならないうちに、后も亡くなってしまわれた。

解釈の決め手

はかなく:不自然死

取るに足らないとの意味で解釈されているが、「あな恐ろしや」、「ゆゆしう(不吉な)」などの関連から、あきらかにあっけない最期を迎えさせられたのも不吉で、ほどの意味。

思しつつみ:明言するの反対

「慎(つつ)み」と考え警戒すると解釈されているが、感情を押し殺す意味。「ゆゆしう」で止め、後につづく表現を押し殺して口にしなかったことを受ける。はっきり口にしたら、母后の身にも害が及ぶと判断したのである。それほどに弘徽殿の女御の権力は強く、各所にスパイを置いていたのであろう。

解析編

語りの対象・構造型・経路図

対象:藤壺の宮の母后弘徽殿女御桐壺更衣

  • 母后 あな恐ろしや 春宮の女御のいとさがなくて 桐壺の更衣のあらはにはかなくもてなされにし例もゆゆしうと思しつつみて》A
    母后は、まあ恐ろしい、東宮の母はとても性悪で桐壺の更衣があんなにはっきりとあっけない最期を迎えるはめになった例も忌まわしいのにと、
  • すがすがしうも思し立たざりけるほどに・后も亡せたまひぬ》B・C
    口をつぐみ前向きに事をお進めにならないうちに、后も亡くなってしまわれた。

直列型:A<B<C

  • A<B<C:A<B<C
  • A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉 ※係り受けは主述関係を含む
  • 〈直列型〉<:直進 :倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列 〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 :中止法
  • 〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用

述語句・情報の階層・係り受け

構文:も亡せたまひぬ/二次

〈母后〉 @あな恐ろしや 〈春宮の女御の〉214とさがなくて 〈桐壺の更衣の〉あらはにはかなくもてなされにし〈例〉もゆゆしう 思しつつみて すがすがしうも思し立たざりけるほど 〈后〉も亡せたまひぬ
  • 〈主〉述:一朱二緑三青四橙五紫六水 [ ]:補 /:挿入 :分岐
  • 「后」は「母后」の言い換え。
  • 214「いとさがなくて」→「もてなされにし」

附録:助詞・敬語の識別・助動詞

  • 母后 あな恐ろし 春宮女御いとさがなく 桐壺更衣あらはにはかなくもてなされにしゆゆしう思しつつみ すがすがしう思し立たざりけるほど 后亡せたまひ
  • 助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞
  • 母后 あな恐ろしや 春宮の女御のいとさがなくて 桐壺の更衣のあらはにはかなくもてなされにし例もゆゆしうと思しつつみて すがすがしうも思し立たざりけるほどに 后も亡せたまひ
  • 尊敬語 謙譲語 丁寧語

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語彙編

さがなく

性格がねじ曲がっている。

あらはに

「はかなくもてなされにし」ことが「あらはなり」。

すがすがしう

停滞なく。

思し立たざりけるほどに

気乗りしない、決心がつかないうちに。

おさらい

母后 あな恐ろしや 春宮の女御のいとさがなくて 桐壺の更衣のあらはにはかなくもてなされにし例もゆゆしうと思しつつみて すがすがしうも思し立たざりけるほどに 后も亡せたまひぬ

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