主上も限りなき御思 138

2019-10-02☆☆☆:特別な問題点はない01 桐壺

解読編

桐壺 原文 現代語訳 第9章12

主上うへかぎりなきおほむおもひどちにて なうとみたまひそ あやしくよそへきこえつべきここなむする なめしとおぼさでらうたくしたま  つらつきまみなど いとようたりしゆゑ かよひてえたまふもげなからずなむなど こえつけたまへれば をさなごこにも はかなきはな紅葉もみぢにつけても こころざしをえたてまつ  難易度☆☆☆
帝にしても限りなく愛しい同士の二人なので、疎んではなりませんよ。あの子は不思議と母になぞらえたい気持ちでいるのです。無礼だとお思いにならずかわいがってあげなさい。顔立ちまなざしなど母はとてもよく似ていたので、あなたが母に見えるのも無理からぬことでなど、藤壺の宮にお頼み申し上げておられたので、幼な心にも桜や紅葉などちょっとした機会にこと寄せお慕いしているお気持ちをお示し申しあげるのでした。

解析編

語りの対象・構造型・経路図

対象:藤壺の宮光源氏桐壺更衣

  • 主上も限りなき御思ひどちにて》A
    帝にしても限りなく愛しい同士の二人なので、
  • な疎みたまひそ・あやしくよそへきこえつべき心地なむする なめしと思さでらうたくしたまへ》B・C
    疎んではなりませんよ。あの子は不思議と母になぞらえたい気持ちでいるのです。無礼だとお思いにならずかわいがってあげなさい。
  • つらつきまみなどはいとよう似たりしゆゑ かよひて見えたまふも似げなからずなむ・など聞こえつけたまへれば》D・E
    顔立ちまなざしなど母はとてもよく似ていたので、あなたが母に見えるのも無理からぬことでなど、藤壺の宮にお頼み申し上げておられたので、
  • 幼心地にも はかなき花紅葉につけても 心ざしを見えたてまつる》F
    幼な心にも桜や紅葉などちょっとした機会にこと寄せお慕いしているお気持ちをお示し申しあげるのでした。

分岐型:A<(B+C+D<)E<F

  • A<(B+C+D<)E<F:A<E<F、B+C+D<E
  • A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉 ※係り受けは主述関係を含む
  • 〈直列型〉<:直進 :倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列 〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 :中止法
  • 〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用

述語句・情報の階層・係り受け

構文:ば…にも…につけても…を見えたてまつる/二次

〈主上〉も213りなき御思ひどちにて な疎みたまひそ あやしくよそへきこえつべき心地なむする なめしと思さでらうたくしたまへ つらつきまみ〉などはいとよう似たりしゆゑ かよひて見えたまふ〈[の]〉も似げなからずなむなど 聞こえつけたまへれ 〈[光源氏]〉幼心地にも はかなき花紅葉につけても 心ざしを見えたてまつる
  • 〈主〉述:一朱二緑三青四橙五紫六水 [ ]:補 /:挿入 :分岐
  • 213「限りなき御思ひどちにて」→「聞こえつけたまへれば」

附録:助詞・敬語の識別・助動詞

  • 主上限りなき御思ひどち な疎みたまひ あやしくよそへきこえつべき心地なむする なめし思さらうたくしたまへ つらつきまみなどいとよう似たりしゆゑ かよひ見えたまふ似げなからなむなど 聞こえつけたまへ 幼心地 はかなき花紅葉つけ 心ざし見えたてまつる
  • 助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞
  • 主上も限りなき思ひどちにて な疎みたまひそ あやしくよそへきこえつべき心地なむする なめしと思さでらうたくしたまへ つらつきまみなどはいとよう似たりしゆゑ かよひて見えたまふも似げなからずなむなど 聞こえつけたまへれば 幼心地にも はかなき花紅葉につけても 心ざしを見えたてまつる
  • 尊敬語 謙譲語 丁寧語

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語彙編

御思ひどち

帝にとって藤壺の宮と光源氏はどちらも愛しい同士の二人であること。

よそへきこえつべき

「よそふ」対象に敬意が向くので、藤壺の宮を桐壺更衣に比べる、似ていると考える、見立てる。通例主体を帝とするが、直後の「らうたくしたまへ」とのつながりから、光源氏ととるのがよさそうだ。敬語がないので、どちらでも解釈は可能である。

なめし

無礼。高貴な藤壺の宮を、母である身分の低い桐壺更衣になぞらえることに対して。

らうたく

かわいい。

似たりし

桐壺更衣が藤壺の宮に似ていた。敬語がない点に注意。

かよひて見えたまふ

形容詞の連用形(て)+「見ゆ」+「たまふ」。光源氏には藤壺の宮が桐壺更衣と似通ってお見えになる。「たまふ」は藤壺に対する敬意。

似げなからず

似つかわしい。

聞こえつけたまへれば

帝が藤壺にお願い申されておられたので。

おさらい

主上も限りなき御思ひどちにて な疎みたまひそ あやしくよそへきこえつべき心地なむする なめしと思さでらうたくしたまへ つらつきまみなどはいとよう似たりしゆゑ かよひて見えたまふも似げなからずなむ など聞こえつけたまへれば 幼心地にも はかなき花紅葉につけても 心ざしを見えたてまつる

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