源氏の君は御あたり 136 ★★☆

2019-10-02★★☆:文の構造を捉え直す01 桐壺,中断型

解読編

桐壺 原文 現代語訳 第9章10

げんきみおほむあたりりたまはぬを ましてしげくわたらせたまふおんかたはえぢあへたまはず いづれのおんかたも われひとおとらむとおぼいたるやはあ  とりどりにいとめでたけれ  うち大人おとなびたまへるに いとわかううつくしげにて せちかくれたまへど おのづからたてまつ  難易度★★☆
源氏の君は帝のお側からお離れにならないので、誰にもまして帝が足繁くお通いになる藤壺の宮は恥らい通すこともならず、そもそもどの女御方も自分が人より劣っているとお思いになるはずもなく、お一方お一方が魅力に溢れていらっしゃるがやや年嵩であられるのに引き換え、藤壺の宮はとても若く愛らしく懸命にお隠れになるが、魅力がおのずと漏れ出し若宮の目に留まるのでした。

解析編

語りの対象・構造型・経路図

対象:光源氏藤壺の宮女御たち(いづれの御方)

  • 源氏の君は御あたり去りたまはぬ》A
    源氏の君は帝のお側からお離れにならないので、
  • ましてしげく渡らせたまふ御方はえ恥ぢあへたまはず》B
    誰にもまして帝が足繁くお通いになる藤壺の宮は恥らい通すこともならず、
  • いづれの御方も・われ人に劣らむと思いたるやはある・とりどりにいとめでたけれど うち大人びたまへるに》C・D・E
    そもそもどの女御方も自分が人より劣っているとお思いになるはずもなく、お一方お一方が魅力に溢れていらっしゃるがやや年嵩であられるのに引き換え、
  • いと若ううつくしげにて 切に隠れたまへど・おのづから漏り見たてまつる》F・G
    藤壺の宮はとても若く愛らしくいらして、懸命にお隠れになるが、魅力がおのずと漏れ出し若宮の目に留まるのでした。

分岐型・中断型:A<(B<(C<[D<]E<)F<)G

  • A<(B<(C<[D<]E<)F<)G:A<G、B<F<G、C<E<F、D
  • A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉 ※係り受けは主述関係を含む
  • 〈直列型〉<:直進 :倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列 〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 :中止法
  • 〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用

述語句・情報の階層・係り受け

構文:は…ど おのづから漏り見たてまつる/三次

源氏の君〉は御あたり去りたまはぬ ましてしげく219らせたまふ〈御方[=藤壺]〉はえ恥ぢあへたまはず 220づれの御方〉も 221れ〉に劣らむと思いたるやはある とりどりにいとめでたけれど 222ち大人びたまへるいと若ううつくしげにて 切に隠れたまへ おのづから漏り見たてまつる
  • 〈主〉述:一朱二緑三青四橙五紫六水 [ ]:補 /:挿入 :分岐
  • 「源氏の君は…おのづから漏り見たてまつる」:大構造
  • 「え恥ぢあへたまはず」→「いと若ううつくしげにて」/「え恥ぢあへたまはず」→「切に隠れたまへど」も可
  • 219「渡らせたまふ御方は」→「え恥ぢあへたまはず」→(「いと若ううつくしげにて」)→「切に隠れたまへど」→「おのづから漏り見たてまつる」
  • 220「いづれの御方も」→「とりどりにいとめでたけれど」→「うち大人びたまへるに」
  • 221「われ人に劣らむと思いたるやはある」:挿入(帝の妻としての心構え) 「やは」は反語 どの妻も人に劣るという考えはない
  • 222「うち大人びたまへる」「いと若ううつくしげにて」:藤壺と他の女御更衣との対比

附録:助詞・敬語の識別・助動詞

  • 源氏御あたり去りたまは ましてしげく渡らたまふ御方え恥ぢあへたまは いづれ御方 われ人劣ら思いたるある とりどりにいとめでたけれ うち大人びたまへ いと若ううつくしげに 切に隠れたまへ おのづから漏り見たてまつる
  • 助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞
  • 源氏の君はあたり去りたまはぬを ましてしげく渡らせたまふ御方はえ恥ぢあへたまはず いづれの方も われ人に劣らむと思いたるやはある とりどりにいとめでたけれど うち大人びたまへるに いと若ううつくしげにて 切に隠れたまへど おのづから漏り見たてまつる
  • 尊敬語 謙譲語 丁寧語

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語彙編

源氏の君

源氏性を受けて臣下となったことが知られる。

まして

ほかの夫人たちにもまして。

え恥ぢあへたまわず

「あへ」はすっかりし切る、「え…ず」で、それができないの意味。恥ずかしいがって顔を合わさないで通すわけにはいかない。

思いたるやはある

「やは」は反語。「思(おぼ)い」は「思(おぼ)す」の連用形のイ音便。

とりどりに

多くの要素が集まる集団においてそれぞれが独自の価値をもつ。

めでたけれ

「愛づ」+「いたし(甚だしい)」。

うち

すこし、印象として。

漏り見たてまつる

意図して見るのではなく、自然と漏れてくる様子を伺う。母に似ているからと意識するのは後のこと。帝が足繁く通うから漏れ見る機会が多かった。他の婦人より若かった。この二点。

おさらい

源氏の君は御あたり去りたまはぬを ましてしげく渡らせたまふ御方はえ恥ぢあへたまはず いづれの御方も われ人に劣らむと思いたるやはある とりどりにいとめでたけれど うち大人びたまへるに いと若ううつくしげにて 切に隠れたまへど おのづから漏り見たてまつる

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