文など作り交はして 123
解読編
桐壺 原文 現代語訳 第8章18
文など作り交はして 今日明日帰り去りなむとするに かくありがたき人に対面したるよろこび かへりては悲しかるべき心ばへを おもしろく作りたるに 御子もいとあはれなる句を作りたまへるを 限りなうめでたてまつりて いみじき贈り物どもを捧げたてまつる
難易度☆☆☆
漢詩などを詠み交わし、今日明日にも帰途に就こうという段に、相人がこのように稀有な相をお持ちの方に対面できた喜び、それだけに別れは悲しみがいや増すと、心の揺れを巧みに盛り込んだ作詩したのに応じて、御子も心のこもった対句をお作りになったので、使者はこの上なく賞賛申し上げて、数々のすばらしい贈り物を御子に差し上げた。
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解析編
語りの対象・構造型・経路図
対象:相人/光源氏
- 《文など作り交はして 今日明日帰り去りなむとするに》A
漢詩などを詠み交わし、今日明日にも帰途に就こうという段に、 - 《かくありがたき人に対面したるよろこび かへりては悲しかるべき心ばへを おもしろく作りたるに》B
相人がこのように稀有な相をお持ちの方に対面できた喜び、それだけに別れは悲しみがいや増すと、心の揺れを巧みに盛り込んだ作詩したのに応じて、 - 《御子もいとあはれなる句を作りたまへるを》C
御子も心のこもった対句をお作りになったので、 - 《限りなうめでたてまつりて いみじき贈り物どもを捧げたてまつる》D
使者はこの上なく賞賛申し上げて、数々のすばらしい贈り物を御子に差し上げた。
直列型:A<B<C<D
- A<B<C<D:A<B<C<D
- A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉 ※係り受けは主述関係を含む
- 〈直列型〉<:直進 #:倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列 〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 |:中止法
- 〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用
述語句・情報の階層・係り受け
構文:を…めでたてまつりて…どもを捧げたてまつる/四次
〈[高麗の使者]〉文など作り交はして 今日明日帰り去りなむとするに @かくありがたき人に対面したるよろこび かへりては悲しかるべき心ばへを@ おもしろく作りたるに 〈御子〉もいとあはれなる句を作りたまへるを 限りなうめでたてまつりて いみじき贈り物どもを捧げたてまつる
- 〈主〉述:一朱・二緑・三青・四橙・五紫・六水 [ ]:補 /:挿入 @・@・@・@:分岐
- 「(帰り去りなむとする)に」から「かくありがたき」はいったん文意が本流から離れるが、「(作りたる)に」で「に」を繰り返すことで分岐の終了の合図となり、本筋に帰ることができる。
- 194「帰り去りなむとするに」→「(心ばへを)おもしろく作りたるに」→「(句を)作りたまへるを」→「をめでたてまつりて…を捧げたてまつる」
- 195「かくありがたき人に対面したるよろこび」「かへりては悲しかるべき心ばへ」(並列)→「を」
附録:助詞・敬語の識別・助動詞
- 文など作り交はして 今日明日帰り去りなむとするに かくありがたき人に対面したるよろこび かへりては悲しかるべき心ばへを おもしろく作りたるに 御子もいとあはれなる句を作りたまへるを 限りなうめでたてまつりて いみじき贈り物どもを捧げたてまつる
- 助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞
- 文など作り交はして 今日明日帰り去りなむとするに かくありがたき人に対面したるよろこび かへりては悲しかるべき心ばへを おもしろく作りたるに 御子もいとあはれなる句を作りたまへるを 限りなうめでたてまつりて いみじき贈り物どもを捧げたてまつる
- 尊敬語 謙譲語 丁寧語
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語彙編
かくありがたき人に…悲しかるべき心ばへ
漢詩の内容。このように立派な人相の人物と対面できた慶び、国に戻るに際してそれが悲しみへと変わる気持ち。
いみじき
並み一通りでない。
捧げたてまつる
右大弁の子に扮している若君に対して贈られた。
おさらい
文など作り交はして 今日明日帰り去りなむとするに かくありがたき人に対面したるよろこび かへりては悲しかるべき心ばへを おもしろく作りたるに 御子もいとあはれなる句を作りたまへるを 限りなうめでたてまつりて いみじき贈り物どもを捧げたてまつる
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