御方々も隠れたまは 117
解読編
桐壺 原文 現代語訳 第8章12
御方々も隠れたまはず 今よりなまめかしう恥づかしげにおはすれば いとをかしううちとけぬ遊び種に 誰れも誰れも思ひきこえたまへり
難易度☆☆☆
他の夫人方もお隠れにならず、今から気が引けるほどの気品を備えておいででしたから、とても愛らしくも心安まらぬ遊び相手だと誰もがみな思い申し上げておられました。
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解析編
語りの対象・構造型・経路図
対象:女御更衣たち/光源氏
- 《御方々も隠れたまはず》A
他の夫人方もお隠れにならず、 - 《今よりなまめかしう恥づかしげにおはすれば》B
今から気が引けるほどの気品を備えておいででしたから、 - 《いとをかしううちとけぬ遊び種に・誰れも誰れも思ひきこえたまへり》C・D
とても愛らしくも心安まらぬ遊び相手だと誰もがみな思い申し上げておられました。
分岐型:A<(B<C<)D
- A<(B<C<)D:A<D、B<C<D
- A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉 ※係り受けは主述関係を含む
- 〈直列型〉<:直進 #:倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列 〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 |:中止法
- 〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用
述語句・情報の階層・係り受け
構文:ば…に…も…も思ひきこえたまへり/二次
〈御方々〉も隠れたまはず @〈[御子]〉今よりなまめかしう恥づかしげにおはすれば いとをかしううちとけぬ遊び種に@ 〈誰れ〉も〈誰れ〉も思ひきこえたまへり
- 〈主〉述:一朱・二緑・三青・四橙・五紫・六水 [ ]:補 /:挿入 @・@・@・@:分岐
- 色は連用中止法(または終始)で色付けした。
- 185「御方々も隠れたまはず」:連用中止法、または連用法で「思ひきこえたまへり」にかかる
- 186「誰れも誰れも」:「御方々も」の言い換え
附録:助詞・敬語の識別・助動詞
- 御方々も隠れたまはず 今よりなまめかしう恥づかしげにおはすれば いとをかしううちとけぬ遊び種に 誰れも誰れも思ひきこえたまへり
- 助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞
- 御方々も隠れたまはず 今よりなまめかしう恥づかしげにおはすれば いとをかしううちとけぬ遊び種に 誰れも誰れも思ひきこえたまへり
- 尊敬語 謙譲語 丁寧語
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語彙編
なまめかしう
未成熟の美。
恥づかしげに
見る側が引け目を感じるほど相手が立派。
をかしう
愛すべき(ヲコなものに対する愛情)。下に打ち消し「ぬ」があるが、掛けない。
うちとけぬ
気を許さない。「いとをかしううちとけぬ」はアンビバレントな(相反する感情が同居する)感情である。
おさらい
御方々も隠れたまはず 今よりなまめかしう恥づかしげにおはすれば いとをかしううちとけぬ遊び種に 誰れも誰れも思ひきこえたまへり
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