命婦かしこに参で着 053
解読編
桐壺 原文 現代語訳 第5章04
命婦かしこに参で着きて 門引き入るるより けはひあはれなり
難易度☆☆☆
命婦が里に行き着き門より牛車を引き入れるや、あたりには哀感が漂っておりました。
解釈の決め手
引き入るる:ためらい
力を込めて引っ張り入れる。後に「えも乗りやらず/01-076」とあるので、牛車を引き入れたことがわかる。牛車までも、心理的抵抗のある場所というニュアンスを受ける。自動詞は四段活用、他動詞は下二段活用。
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解析編
語りの対象・構造型・経路図
対象:帝の使者である命婦/里の様子
- 《命婦かしこに参で着きて 門引き入るるより》A
命婦が里に行き着き門より牛車を引き入れるや、 - 《けはひあはれなり》B
あたりには哀感が漂っておりました。
直列型:A<B
- A<B:A<B
- A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉 ※係り受けは主述関係を含む
- 〈直列型〉<:直進 #:倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列 〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 |:中止法
- 〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用
述語句・情報の階層・係り受け
構文:より…あはれなり/二次
〈命婦〉かしこに参で着きて 門引き入るるより 〈けはひ〉あはれなり
- 〈主〉述:一朱・二緑・三青・四橙・五紫・六水 [ ]:補 /:挿入 @・@・@・@:分岐
- 「より」は一般に格助詞だが、用法により接続助詞とする説がある。ここでも「より」の前後で主語が一致しておらず、接続助詞と考える方が理にかなう。
附録:助詞・敬語の識別・助動詞
- 命婦かしこに参で着きて 門引き入るるより けはひあはれなり
- 助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞
- 命婦かしこに参で着きて 門引き入るるより けはひあはれなり
- 尊敬語 謙譲語 丁寧語
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語彙編
命婦
後宮の女官で五位以上の女性、または五位以上の官人の妻。
かしこ
桐壺更衣の実家である母北の方の家。
あはれなり
心を強く揺さぶる感情。語り手と命婦が一体化している。これ以降も一体化はつづく。
おさらい
命婦かしこに参で着きて 門引き入るるより けはひあはれなり
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