宮城野の露吹きむ 062
解読編
目次
桐壺 原文 現代語訳 第5章13
宮城野の露吹きむすぶ風の音に 小萩がもとを思ひこそやれ とあれどえ見たまひ果てず
難易度☆☆☆
宮城野のように我が子から遠く離れた宮中で吹いては露をむすぶ風の音を聞くと、野にある小萩のことが涙ながらに思われてならないと歌にあるが、母君は最後までお読みになることができない。
解釈の決め手
風の音
野分の音。この歌からすると、露は夜から朝にかけて発生するからものだから、昨夜から今朝の未明にかけて野分が吹いたことが予想される。
とあれど
「あれど」の前に「御文/01-059」が省略されている。従って、「あれど」は無敬表現ではない。
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解析編
語りの対象・構造型・経路図
対象:帝/敵対勢力の動き/光源氏または光源氏が里帰りしている里/母君
- 《宮城野の露吹きむすぶ風の音に》 A
宮城野のようにそちらからは遠い宮中で吹いては露をむすぶ風の音を聞くと、 - 《小萩がもとを思ひこそやれ》B
野にある小萩のことが涙ながらに思われてならない - 《とあれどえ見たまひ果てず》C
と歌にあるが、母君は最後までお読みになることができない。
直列型:A<B<C
- A<B<C:A<B<C
- A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉 ※係り受けは主述関係を含む
- 〈直列型〉<:直進 #:倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列 〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 |:中止法
- 〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用
述語句・情報の階層・係り受け
構文:どえ見たまひ果てず/四次
@宮城野の露吹きむすぶ風の音に 小萩がもとを思ひこそやれ と@あれど〈[母君]〉え見たまひ果てず
- 〈主〉述:一朱・二緑・三青・四橙・五紫・六水 [ ]:補 /:挿入 @・@・@・@:分岐
- 115「とあれど」:語り手の補足(と手紙にあるが)
附録:助詞・敬語の識別・助動詞
- 宮城野の露吹きむすぶ風の音に 小萩がもとを思ひこそやれ とあれどえ見たまひ果てず
- 助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞
- 宮城野の露吹きむすぶ風の音に 小萩がもとを思ひこそやれ とあれどえ見たまひ果てず
- 尊敬語 謙譲語 丁寧語
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語彙編
宮城野
萩の名所。宮城野の宮に宮中をかける。
小萩
小と子をかける。光の君。
露
涙を意味する歌語。
思ひこそやれ
「思ひやる」を「こそ」で強調した表現。心配になるとの意味。
おさらい
宮城野の露吹きむすぶ風の音に 小萩がもとを思ひこそやれ とあれどえ見たまひ果てず
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