もの思ひ知りたまふ 043

2019-09-29☆☆☆:特別な問題点はない01 桐壺,中断型

解読編

桐壺 原文 現代語訳 第4章08

ものおもりたまふは さま容貌かたちなどのめでたかりしこと こころばせのなだらかにめやす にくみがたかりしことなど いまおぼづる さましきおほむもてなしゆゑこ  すげなうそねみたまひし 
難易度☆☆☆

ものごとをしっかりと判断なさる女御方は、姿や顔立ちの美しかったこと、気立てが穏やかで欠点がなく憎めなかったことなどを今になって懐かしく思い出しになった。正視に耐えない帝のご寵愛ゆえ心なくそねんだりもされたのだろうか。

解釈の決め手

もの思ひ知りたまふ:分別

「ものの心知りたまふ人/01-023」が「ものの本質を見抜く力がある人」即ち、政治の中枢で活躍している公卿たちであったが、ここはそれとは別で、ものごとを感情に左右されずに理解できる人たち。この「もの」は客観的事実で、本来人の情に左右されないはずだが、利己的な感情から歪めて見てしまうものだが、そうでない人たちがいたことになる。具体的には、桐壺更衣の様子や顔を見ることができ、敬語が使われていることから、桐壺更衣を敵視せず、中立の立場にあった女御たち。

さま悪しき御もてなし

「ある時には大殿籠もり過ぐして、やがてさぶらはせたまひなど(時には共寝したまま起きそびれ、そのまま側仕えをおさせになるなど)/01-012」とある。政治は朝から昼前まで行われるのが、帝として理想とされているので、政治を投げ出したことをも意味した。

解析編

語りの対象・構造型・経路図

対象:中立の女御たち(もの思ひ知りたまふ人々)桐壺更衣の思い出

  • もの思ひ知りたまふは A
    ものごとをしっかりと判断なさる女御方は、
  • 様容貌などのめでたかりしこと・心ばせのなだらかにめやすく憎みがたかりしことB・C
    姿や顔立ちの美しかったこと、気立てが穏やかで欠点がなく憎めなかったことなどを、
  • など今ぞ思し出づるD
    今になって懐かしく思い出しになった。
  • さま悪しき御もてなしゆゑこそ・すげなう嫉みたまひしかE・F
    正視に耐えない帝のご寵愛ゆえ心なくそねんだりもされたのだろうか。

分岐型・中断型:A<B+C<Dφ[E<F]

  • A<B+C<Dφ[E<F]:A<B+C<D、D、E<F
  • A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉 ※係り受けは主述関係を含む
  • 〈直列型〉<:直進 :倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列 〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 :中止法
  • 〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用

述語句・情報の階層・係り受け

構文:は…など…ぞ思し出づる/三次φこそ…嫉みたまひしか/二次

もの思ひ知りたまふ〈[人]〉は [桐壺更衣の]086容貌など〉のめでたかりしこと 〈心ばせ〉のなだらかにめやすく憎みがたかりしことなど 今ぞ思し出づる /087ま〉悪しき御もてなしゆゑこそ 〈[人]〉すげなう嫉みたまひしか
  • 〈主〉述:一朱二緑三青四橙五紫六水 [ ]:補 /:挿入 :分岐
  • 086「様容貌などのめでたかりしこと」「心ばせのなだらかにめやすく憎みがたかりしこと」:並列
  • 087「さま悪しき御もてなしゆゑこそすげなう嫉みたまひしか」(挿入):生前、桐壺更衣に対して思いやりに欠けた理由を語り手が推測する

附録:助詞・敬語の識別・助動詞

  • もの思ひ知りたまふ 様容貌などめでたかりこと 心ばせなだらかにめやすく憎みがたかりことなど 今思し出づる さま悪しき御もてなしゆゑこそ すげなう嫉みたまひしか
  • 助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞
  • もの思ひ知りたまふは 様容貌などのめでたかりしこと 心ばせのなだらかにめやすく憎みがたかりしことなど 今ぞ思し出づる さま悪しきもてなしゆゑこそ すげなう嫉みたまひしか
  • 尊敬語 謙譲語 丁寧語

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語彙編

めでたかりし

愛でずにはいられない。

心ばせ

思いやり。心がそちらに馳せてゆく。

めやすく

見た目に難がない。消極的評価。安心して見ていられる。

すげなう

「す」は接頭語で「気がない」こと。本来なら味方になっていい立ち場にいながら、非協力的になること。類語は「つれなし」。

嫉みたまひしか

本来が中立的立ち場なので、桐壺更衣に対して悪意を抱く必要はないが、帝の政治離れを引き起こす原因となることから快く思っていなかった。これは弘徽殿の女御など、東宮位を争うという身びいきから桐壺を敵視した立ち場とは自ずと違いがある。

おさらい

もの思ひ知りたまふは 様容貌などのめでたかりしこと 心ばせのなだらかにめやすく憎みがたかりしことなど 今ぞ思し出づる さま悪しき御もてなしゆゑこそ すげなう嫉みたまひしか

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