女御とだに言はせず 041
解読編
桐壺 原文 現代語訳 第4章06
女御とだに言はせずなりぬるが あかず口惜しう思さるれば いま一階の位をだにと 贈らせたまふなりけり
難易度☆☆☆
生前后(きさき)はおろか女御とさえ呼ばせずに終ったことが、残念でならぬとお考えなので、せめて一階級だけでもと贈られたのです。
解釈の決め手
だに
最低限の願望、せめて。できるなら皇后や中宮に選び、光の君を東宮にさせてやりたかったとの帝の思い。「来し方行く末思し召されず、よろづのことを泣く泣く契りのたまはすれど(後先のわきまえもなく、どんな誓いをも涙ながらにお立てになるのですが)/01-028」で帝は口約束をしている。おそらくその手のことは、幾度となく口にしていたろう、そのことを思い出している。
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解析編
語りの対象・構造型・経路図
対象:帝
- 《女御とだに言はせずなりぬるが・あかず口惜しう思さるれば》A・B
生前后(きさき)はおろか女御とさえ呼ばせずに終ったことが、残念でならぬとお考えなので、 - 《いま一階の位をだにと贈らせたまふなりけり》 C
せめて一階級だけでもと贈られたのです。
直列型:A<B<C
- A<B<C:A<B<C
- A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉 ※係り受けは主述関係を含む
- 〈直列型〉<:直進 #:倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列 〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 |:中止法
- 〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用
述語句・情報の階層・係り受け
構文:ば…と…贈らせたまふなりけり/三次
〈[帝]〉女御とだに言はせずなりぬる〈[の]〉が あかず口惜しう思さるれば いま一階の位をだにと 贈らせたまふなりけり
- 〈主〉述:一朱・二緑・三青・四橙・五紫・六水 [ ]:補 /:挿入 @・@・@・@:分岐
- 084「言はせずなりぬるが」(主格「が」)/「あかず口惜しう」:主語/述語
附録:助詞・敬語の識別・助動詞
- 女御とだに言はせずなりぬるが あかず口惜しう思さるれば いま一階の位をだにと 贈らせたまふなりけり
- 助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞
- 女御とだに言はせずなりぬるが あかず口惜しう思さるれば いま一階の位をだにと 贈らせたまふなりけり
- 尊敬語 謙譲語 丁寧語
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語彙編
言はせず
帝が桐壺更衣に自分を女御と呼ばせる。「せ」は使役。
あかず
飽くことなく、不満で。
口惜しう
期待に反する結果となり運命を恨む気持ち。
一階の位
正四位上から従三位(じゅさんみ)になった。これは更衣クラスから女御クラスに昇進したことを意味する。
おさらい
女御とだに言はせずなりぬるが あかず口惜しう思さるれば いま一階の位をだにと 贈らせたまふなりけり
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