内裏より御使あり 040
解読編
桐壺 原文 現代語訳 第4章05
内裏より御使あり 三位の位贈りたまふよし 勅使来てその宣命読むなむ 悲しきことなりける
難易度☆☆☆
宮中から使者が来て、三位のくらいを追贈なさる旨を伝えた。勅使が来て、三位追贈の宣命を読み上げることこそ悲しいことであった。
解釈の決め手
御使・勅使
御使と勅使は別である。「帝より『三位の位を贈りたまふ』とのよしです」と、勅使の来訪を伝える使者が先ず来る。勅使が来たら、それ相応の対応を迫られるので、その準備をする。準備が済んだ頃に、勅使がしずしずと来て「三位の位を贈る」宣命を読むという二段階。桐壺更衣は正四位上であったから、従三位(じゅさんみ)を贈られたことになる。これは女御の位に相当する。
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解析編
語りの対象・構造型・経路図
対象:御使/帝/勅使/桐壺更衣の母
- 《内裏より御使あり・三位の位贈りたまふよし》A・B
宮中から使者が来て、「三位のくらいを追贈なさる旨」を伝えた。 - 《勅使来て・その宣命読むなむ悲しきことなりける》C・D
勅使が来て、三位追贈の宣命を読み上げることこそ悲しいことであった。
中断型:AφBφC<D
- AφBφC<D:A、B、C<D
- A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉 ※係り受けは主述関係を含む
- 〈直列型〉<:直進 #:倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列 〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 |:中止法
- 〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用
述語句・情報の階層・係り受け
構文:なむ悲しきことなりける/二次
内裏より〈御使〉あり 〈[帝]〉三位の位贈りたまふよし 〈勅使〉来てその宣命〈読む〉なむ 悲しきことなりける
- 〈主〉述:一朱・二緑・三青・四橙・五紫・六水 [ ]:補 /:挿入 @・@・@・@:分岐
附録:助詞・敬語の識別・助動詞
- 内裏より御使あり 三位の位贈りたまふよし 勅使来てその宣命読むなむ 悲しきことなりける
- 助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞
- 内裏より御使あり 三位の位贈りたまふよし 勅使来てその宣命読むなむ 悲しきことなりける
- 尊敬語 謙譲語 丁寧語
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語彙編
内裏
宮中。帝のもと。
悲しきこと
死後の追贈で位があがることはありがたいことであるが、死が社会的にも確定事実とされる。娘はもう戻らないことを改めて確認することになる。
おさらい
内裏より御使あり 三位の位贈りたまふよし 勅使来てその宣命読むなむ 悲しきことなりける
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