ほど経るままに せ 047 ★☆☆
解読編
目次
桐壺 原文 現代語訳 第4章12
ほど経るままに せむ方なう悲しう思さるるに 御方がたの御宿直なども絶えてしたまはず ただ涙にひちて明かし暮らさせたまへば 見たてまつる人さへ 露けき秋なり
難易度★☆☆
時が経つにしたがいやるかたなく悲しくお思いになり、女御たちとの夜伽も絶えてなさらず、朝も夕もただ涙にくれておられるので、ご夫人方ばかりか拝顔する女房たちまでが悲しみに沈む秋でした。
解釈の決め手
ほど経るままに
普通なら時間の経過とともに悲しみは次第に癒やされてゆくものだが、そうはならず。
御宿直なども絶えてしたまはず:夜の務め
性交渉をしないのみならず、見向きもしなくなる。そうなると後宮は存在意義を失ってしまう。帝の日中の務めは政にあり、夜の務めは生殖(子孫を残すことと、平安期の意識として生殖は不老長寿につながる)にある。
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解析編
語りの対象・構造型・経路図
対象:帝/弘徽殿の女御ほか夫人たち/親しき女房・御乳母(/01-049)など
- 《ほど経るままに せむ方なう悲しう思さるるに》A
時が経つにしたがいやるかたなく悲しくお思いになり、 - 《御方がたの御宿直なども絶えてしたまはず・ただ涙にひちて明かし暮らさせたまへば》B・C
女御たちとの夜伽も絶えてなさらず、朝も夕もただ涙にくれておられるので、 - 《見たてまつる人さへ 露けき秋なり》D
ご夫人方ばかりか拝顔する女房たちまでが悲しみに沈む秋でした。
中断型・分配型:A<B|A*<C<D
- A<B|*A<C<D:A<B、*A<C<D
- A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉 ※係り受けは主述関係を含む
- 〈直列型〉<:直進 #:倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列 〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 |:中止法
- 〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用
述語句・情報の階層・係り受け
構文:ば…さへ…秋なり/三次
ほど経るままに 〈[帝]〉せむ方なう悲しう思さるるに 御方がたの御宿直なども絶えてしたまはず ただ涙にひちて明かし暮らさせたまへば 見たてまつる〈人〉さへ 露けき秋なり
- 〈主〉述:一朱・二緑・三青・四橙・五紫・六水 [ ]:補 /:挿入 @・@・@・@:分岐
- 089「ほど経るままに」→「せむ方なう悲しう思さるる」
- 090「せむ方なう悲しう思さるるに」→「明かし暮らさせたまへば」→「露けき秋なり」
- 091「絶えてしたまはず」:連用終止法(「絶えてしたまはず」(連用法)→「明かし暮らさせたまへば」も可。意味に変わりはない)
附録:助詞・敬語の識別・助動詞
- ほど経るままに せむ方なう悲しう思さるるに 御方がたの御宿直なども絶えてしたまはず ただ涙にひちて明かし暮らさせたまへば 見たてまつる人さへ 露けき秋なり
- 助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞
- ほど経るままに せむ方なう悲しう思さるるに 御方がたの御宿直なども絶えてしたまはず ただ涙にひちて明かし暮らさせたまへば 見たてまつる人さへ露けき秋なり
- 尊敬語 謙譲語 丁寧語
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語彙編
せむ方なう
対処のしようがなく。
ひちて
泣き濡れて。
露けき秋
涙にくれる秋。
おさらい
ほど経るままに せむ方なう悲しう思さるるに 御方がたの御宿直なども絶えてしたまはず ただ涙にひちて明かし暮らさせたまへば、見たてまつる人さへ露けき秋なり
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