年ごろ常の篤しさに 025 ★☆☆

2019-09-27★☆☆:語義の洗い直しから01 桐壺

解読編

桐壺 原文 現代語訳 第3章02

としごろつねあつしさになり まへれば おほむれてなほしばし ころみよとのみ たまはするに 日々ひびおもりたまひて ただいつか六日むいかのほどにいとよわうなれば ははぎみそうしてまかでさせたて つりたま 
難易度★☆☆

何年来ご不調が常のご様子でいらっしゃったために、見慣れておいでの帝は、もうしばらく様子をみよとだけお命じになられるが、病態は日に日に悪化し、わずか五六日のうちにひどく衰弱してしまわれたので、母君が泣く泣く帝に奏上し、退出なされるようにしておあげになりました。

解釈の決め手

奏してまかでさせたてまつりたまふ

「動詞A+て+動詞B」では主体が変わらないのが一般的である。従って「奏し」たのが母君であれば、「まかでさせ」た主体も母君と読むのが自然である。「まかでさせ」た行為に対して、「たてまつり」は客体の更衣に、「たまふ」は主体の母君に、敬意を及ぼす。意味上、「まかでさせ」る権限をもつのは帝のみであるが、地の文で「たてまつり」という客体敬意はなじまない。「奏する」と「まかでさせ」の主体を変えるなら、「奏するに、まかでさせたまふ」「奏したまへば、まかでさせたまふ」などとなる。

解析編

語りの対象・構造型・経路図

対象:御息所(桐壺更衣)母君(桐壺更衣の母)

  • 年ごろ常の篤しさになりたまへれば 御目馴れて・なほしばしこころみよと・のみのたまはするにA・B・C
    何年来ご不調が常のご様子でいらっしゃったために、見慣れておいでの帝は、もうしばらく様子をみよとだけお命じになられるが、
  • 日々に重りたまひて ただ五六日のほどにいと弱うなればD
    病態は日に日に悪化し、わずか五六日のうちにひどく衰弱してしまわれたので、
  • 母君泣く泣く奏して まかでさせたてまつりたまふE
    母君が泣く泣く帝に奏上し、退出なされるようにしておあげになりました。

分岐型:A<(B<)C<D<E

  • A<(B<)C<D<E:A<C<D<E、B<C
  • A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉 ※係り受けは主述関係を含む
  • 〈直列型〉<:直進 :倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列 〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 :中止法
  • 〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用

述語句・情報の階層・係り受け

構文:ば…奏してまかでさせたてまつりたまふ/四次

〈[御息所]〉年ごろ常の篤しさになりたまへれ 〈[帝]〉〈御目〉馴れてなほしばしこころみよのみのたまはする 〈[御息所]〉日々に重りたまひて ただ五六日のほどいと弱うなれ 〈母君〉泣く泣く奏してまかでさせたてまつりたまふ
  • 〈主〉述:一朱二緑三青四橙五紫六水 [ ]:補 /:挿入 :分岐

附録:助詞・敬語の識別・助動詞

  • 年ごろ常篤しさなりたまへ 御目馴れなほしばしこころみよのみのたまはする 日々重りたまひ ただ五六日ほどいと弱うなれ 母君泣く泣く奏しまかでさせたてまつりたまふ
  • 助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞
  • 年ごろ常の篤しさになりたまへれば 目馴れてなほしばしこころみよとのみのたまはするに 日々に重りたまひて ただ五六日のほどにいと弱うなれば 母君泣く泣く奏しまかでさせたてまつりたまふ
  • 尊敬語 謙譲語 丁寧語

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語彙編

年ごろ

この何年来。

常の篤しさ

病気が慢性化していること。

なほ

これまで同様、なおもう少し。桐壺更衣の死の予感、あるいは更衣自身さえ気づいていない運命の急転換(呪いによる不自然死)と、帝の認識にズレがあることからドラマ性が生じる。

ただ五六日のほどにいと弱うなれば

桐壺更衣の母の言葉「横様なるやうにてつひにかくなりはべりぬれば//01-070」、藤壺の宮の母の言葉「桐壺の更衣のあらはにはかなくもてなされにし例もゆゆしう/01-129」から、呪詛などによる不自然死が想定される。

おさらい

年ごろ常の篤しさになりたまへれば 御目馴れてなほしばしこころみよとのみのたまはするに 日々に重りたまひて ただ五六日のほどにいと弱うなれば 母君泣く泣く奏してまかでさせたてまつりたまふ

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