事にふれて数知らず 019

2019-09-27☆☆☆:特別な問題点はない01 桐壺

解読編

桐壺 原文 現代語訳 第2章13

ことにふれてかずらずくるしきことのみまされば  いといたうおもひわびたる  いとどあはれとらんじて こうろう殿でんにもとよりさ らひたまふ更衣かういざうを ほかうつさせたまひてうへつぼねたま 
難易度☆☆☆

ことに触れ数しらず苦しいことばかりがいや増すので、それはもうひどく思い悩んでいらっしゃるのを、帝はますます愛情深くお思いになって、後涼殿に元からお仕えである更衣を、よそにお移しになり、空いた部屋を桐壺の上局として下賜なさいました。

解釈の決め手

「もの」が運命・決まり・霊的存在など人の力の及ばない存在であるのに対して、「事」は人と人との間に発生する事態。従って、解決不能というわけではないが、あまりにも敵が多く実際には解決する術を失っていた。帝の寵愛を受けて悦びはあるものの、それより遙かに苦しみが勝った。

上局

普段住んでいる局(下局、里の局とも)に対して、帝がおられる清涼殿に上がる際の清涼殿に隣接する控えの間。これが与えられるのも特別待遇である。なお、もとの桐壺は局として継続使用されるゆえ、更衣の呼び名は桐壺のままである。桐壺更衣の死後、成長した光の君は、内裏に泊まる際には、この局を自分の部屋として使用する。

解析編

語りの対象・構造型・経路図

対象:桐壺更衣後涼殿の更衣

  • 事にふれて数知らず苦しきことのみまされば・いといたう思ひわびたるをいとどあはれと御覧じて A・B
    ことに触れ数しらず苦しいことばかりがいや増すので、それはもうひどく思い悩んでいらっしゃるのを、帝はますます愛情深くお思いになって、
  • 後涼殿にもとよりさぶらひたまふ更衣の曹司を 他に移させたまひて・上局に賜はす C・D
    後涼殿に元からお仕えである更衣を、よそにお移しになり、空いた部屋を桐壺の上局として下賜なさいました。

直列型:A<B<C<D

  • A<B<C<D:A<B<C<D
  • A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉 ※係り受けは主述関係を含む
  • 〈直列型〉<:直進 :倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列 〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 :中止法
  • 〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用

述語句・情報の階層・係り受け

構文:と御覧じて…を…に移させたまひて…に賜はす/三次

〈[桐壺更衣]〉にふれて数知らず〈苦しきこと〉のみまされ いといたう052ひわびたる 〈[帝]〉いとどあはれ053覧じて 後涼殿にもとよりさぶらひたまふ054衣の曹司 他に移させたまひて上局に賜はす
  • 〈主〉述:一朱二緑三青四橙五紫六水 [ ]:補 /:挿入 :分岐
  • 052「思ひわびたるを」→「御覧じて」
  • 053「御覧じて」→「移させたまひて」→「上局に賜はす」
  • 054「更衣の曹司を他に移させたまひて上局に賜はす」(AのBを+動詞X+動詞Y:動詞Xの客体はA、動詞Yの客体はB):更衣を他に移させたまひて、曹司を上局に賜はす(懸垂構文といって英語では非文法とされる)

附録:助詞・敬語の識別・助動詞

  • ふれ数知ら苦しきことのみまされ いといたう思ひわびたる いとどあはれ御覧じ 後涼殿もとよりさぶらひたまふ更衣曹司 他移さたまひ上局賜はす
  • 助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞
  • 事にふれて数知らず苦しきことのみまされば いといたう思ひわびたるを いとどあはれと御覧じて 後涼殿にもとよりさぶらひたまふ更衣の曹司を 他に移させたまひて上局に賜は
  • 尊敬語 謙譲語 丁寧語

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語彙編

わびたる

自分の非力さを今更ながらに思い知ること。

あはれ

愛情・哀れみなどから躍起される強い心の揺れ。

後涼殿

清涼殿の西隣の御殿。

曹司

局と同じく部屋。

おさらい

事にふれて数知らず苦しきことのみまされば いといたう思ひわびたるを いとどあはれと御覧じて 後涼殿にもとよりさぶらひたまふ更衣の曹司を 他に移させたまひて上局に賜はす

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