光る君といふ名は 183
解読編
目次
桐壺 原文 現代語訳 第10章43
光る君といふ名は 高麗人のめできこえてつけたてまつりける とぞ言ひ伝へたるとなむ
難易度☆☆☆
光の君という名は、高麗人が賛嘆申し上げておつけ申しあげたのだと言い伝えられている。
解釈の決め手
光る君:光を発する人
「世にたぐひなしと見たてまつりたまひ名高うおはする宮の御容貌にもなほ匂はしさはたとへむ方なくうつくしげなるを世の人光る君と聞こゆ藤壺ならびたまひて御おぼえもとりどりなればかかやく日の宮と聞こゆ/01-140」とあった。そのとき、光源氏と藤壺は「にほひ=光」で共通し、光源氏の次世代にも「にほひ」は受け継がれるが、「にほひ=香」にランクが下がると注した。光源氏にしても薰や匂の宮にしても体から匂いを発散したとする。物語には明記されていないが、匂いに加えて、光源氏や藤壺は実際に光り輝くように見えたのだろう。
となむ:劇中劇
「となむいふ」などの省略。「言い伝え」とのことという、二重の間接表現になっていることに注意。「となむ」が受けるのは直接的には「光る君といふ名は…とぞ言ひ伝へたる」だが、形式的には、「いづれの御時にか…ありけり」で始まる桐壺の帖全体を受けるとも考え得る。物語冒頭から七十余年の後、源氏物語の最後を語り終える語り手の年齢がいくつかは計りかねるが、同じ語り手が桐壺の帖で語られるエピソードを直接見聞きしたとは考えられない。「となむ」の一語はそうした間接体験であることの証左である。
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解析編
語りの対象・構造型・経路図
対象:光源氏/高麗の相人/世の人
- 《光る君といふ名は 高麗人のめできこえてつけたてまつりけると・ぞ言ひ伝へたる・となむ》A・B・C
光の君という名は、高麗人が賛嘆申し上げておつけ申しあげたのだと言い伝えられている。
直列型:(A<)B<C
- (A<)B<C:A<B<C
- A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉 ※係り受けは主述関係を含む
- 〈直列型〉<:直進 #:倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列 〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 |:中止法
- 〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用
述語句・情報の階層・係り受け
構文:となむ/五次
光る君といふ名は 〈高麗人〉のめできこえてつけたてまつりける とぞ言ひ伝へたるとなむ
- 〈主〉述:一朱・二緑・三青・四橙・五紫・六水 [ ]:補 /:挿入 @・@・@・@:分岐
附録:助詞・敬語の識別・助動詞
- 光る君といふ名は 高麗人のめできこえてつけたてまつりける とぞ言ひ伝へたるとなむ
- 助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞
- 光る君といふ名は 高麗人のめできこえてつけたてまつりける とぞ言ひ伝へたるとなむ
- 尊敬語 謙譲語 丁寧語
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おさらい
光る君といふ名は 高麗人のめできこえてつけたてまつりける とぞ言ひ伝へたるとなむ
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