五六日さぶらひたま 176 ★☆☆
解読編
目次
桐壺 原文 現代語訳 第10章36
五六日さぶらひたまひて 大殿に二三日など絶え絶えにまかでたまへど ただ 今は幼き御ほどに罪なく思しなして いとなみかしづききこえたまふ
難易度★☆☆
五六日宮中にお仕えされて、大臣邸には二三日いるなど絶え絶えのおいでではあるけれど、ただ今は年端もゆかぬからと悪る気なくお取りになって、甲斐甲斐しくお世話申し上げになる。
解釈の決め手
今は幼き御ほどに:婚儀を終えてなお幼きとする意図は
「幼きほどの心一つにかかりて/01-173」では語り手は「御」をつけていない。ここは左大臣の心中語で御になっていると考えるのがよい。元服を済ませた後、帝は大人になったので御簾の内にも入れないのに、婿取りをし盛大に婚儀を挙げながら、「幼き御ほど」は矛盾した表現である。ここには、婿が娘を抱かないことに対する親としてのこじつけが「幼き」と言わせるのだろう。
ただ…罪なく思しなして:その罪とは
「思しなす」とはそうでないものを無理にそう思おうとすること。それを語り手が強調するために「ただ」が加わっている。罪があるのに罪がないと思おうとしたということ。それは、婚儀を催しながら、娘を抱かないことに対しての罪であろう。
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解析編
語りの対象・構造型・経路図
対象:光源氏/左大臣
- 《五六日さぶらひたまひて・大殿に二三日など絶え絶えにまかでたまへど》A・B
五六日宮中にお仕えされて大臣邸には二三日いるなど、絶え絶えのおいでではあるけれど、 - 《ただ今は幼き御ほどに罪なく思しなして いとなみかしづききこえたまふ》C
ただ今は年端もゆかぬからと悪る気なくお取りになって、甲斐甲斐しくお世話申し上げになる。
直列型:A<B<C
- A<B<C:A<B<C
- A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉 ※係り受けは主述関係を含む
- 〈直列型〉<:直進 #:倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列 〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 |:中止法
- 〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用
述語句・情報の階層・係り受け
構文:どただ…は…に罪なく思しなしていとなみかしづききこえたまふ/二次
〈[光源氏]〉五六日さぶらひたまひて 大殿に二三日など絶え絶えにまかでたまへど 〈[左大臣]〉ただ 今は幼き御ほどに罪なく思しなして いとなみかしづききこえたまふ
- 〈主〉述:一朱・二緑・三青・四橙・五紫・六水 [ ]:補 /:挿入 @・@・@・@:分岐
- 246「ただ」→「思しなして」/「ただ今は」ではない。
附録:助詞・敬語の識別・助動詞
- 五六日さぶらひたまひて 大殿に二三日など絶え絶えにまかでたまへど ただ 今は幼き御ほどに罪なく思しなして いとなみかしづききこえたまふ
- 助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞
- 五六日さぶらひたまひて 大殿に二三日など絶え絶えにまかでたまへど ただ 今は幼き御ほどに罪なく思しなして いとなみかしづききこえたまふ
- 尊敬語 謙譲語 丁寧語
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語彙編
五六日
内裏に住む。母の局であった桐壺に住む。
大殿
左大臣宅、正室である葵の上がいる。
いとなみ
精を出して。
おさらい
五六日さぶらひたまひて 大殿に二三日など絶え絶えにまかでたまへど ただ 今は幼き御ほどに罪なく思しなして いとなみかしづききこえたまふ
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